2019年06月02日

その男の正体は

『彼方へと送る一筋の光』第14回です。
今回はネタバレをコミで、ちょっと長い話をしたいと思います。




前回の執筆日記で書きましたが、今回の更新箇所の大部分は、この物語の基本プロットを立てた時点ではありませんでした。
ウィミィがマリーシアを連れてシャンビランに行き、セプタードがブレイリーとともにマリコーンへと赴く決意をすること。それ自体は最初からあったことなんですが、二人ともこんなに長く語る予定ではありませんでした。
それがなぜ、こんなことになったのか。
それのきっかけになった、日記に記した「とんでもない発言」とは何だったのか。
それはセプタードのあの一言。

「もうお前しかいない」です。

これ言われた瞬間、真っ青になりました。愕然としました。
作者が言うのも何ですが、ショックを受けました。
それに続いて「俺がどんな思いでいたと思っているんだ」と叫ばれた時、ヤバイ、と思いました。

言われたブレイリーより、作者の方がそれ判らん!と。

本編を書いていた時も、この『彼方へと送る一筋の光』を書きながらも、一回も考えたことなかった。
一回も奴に視点を動かしてみたことがなかった。
物語上、大変な重要人物であったにもかかわらず、一度も。

セプタード・アイルが、この物語の裏で、一体何を考えていたのか。
それを今回、初めて、考えた。

結果、ネタ神様が捕まりました。
ええもう、セプタードは怒濤の如く喋りましたよ。
過去に何があったか、どういう生い立ちだったのか、本編と『彼方へと送る一筋の光』での時間軸上で、何を考えていたのか。
エルマラと出会い、結婚した経緯。
そんな諸々を、全部語ってくれましたよ。
いやあもう、ショックでした。

ちょっと待て、これひどくない?
どの部分を取り出しても、私泣くんだけど(比喩表現にあらず)
この物語における「傍観者」って、ある意味当事者以上に悲惨なのではないのか?
セプタードは本当に要所要所を全部見てたし、その上で何もできなかったんだよなあ……。
お前、どうしてこれでおかしくならなかったんだよ。カティスもカイルワーンもブレイリーも、みんな一回は精神的におかしくなってるっていうのに。
特に大陸統一暦1000年6月13日、アイラが死んだ後のアルベルティーヌ城でセプタードとカイルワーンが直面した事態なんて、地獄以外の何物だっていうんだ。
アイラの遺体処理とブレイリーの救命が、分単位で同時進行だぞ。

お前って、本当はどういう男なの。今回は、心の底から思った。

そして今回の問題は、不幸好きな私が後付けで設定を新規にこしらえたというわけではなく。
もうすでに、本編で書いてしまっていることから導き出された結論の方が多数だということなんですよね。
セプタードが実は、チートとしか言いようがないほどの剣の使い手だったことは、本編ですでにほのめかしてあることですし。
そして今回ちらりと触れた『三十年前の最初の罪』。これ突然出てきたわけじゃないです。
ええ、本編に書いちゃってるんだよな。
セプタードとブレイリーは、カティスを利用しようと近づいてくる輩を、すでに何人も殺してるって。

これ、完全に話の都合でした。これをやる人間がいないと、絶対に革命の前にアイラシェールがカティスとコンタクトが取れてしまう。
カティスがレーゲンスベルグにいることを、アイラは知ってるんだもの。一度や二度で諦めるはずがない。
革命まで両者を断絶するためには、この方法以外なかったんです。
そのための都合だったんですが、ここに至り、そのツケが来ました。
本編当時もあまり触れたくなくて突っ込むのを逃げたところだったのに、一度考えたら、もうこの問題から逃げられなくなりました。
その結果が、今回のセプタードの叫びです。

「もうお前しかいない」という言葉は、実のところこれより以前のセプタードの心理が判らないといまいち伝わらないのですが。
本当に虚無だ。

その他、ブレイリーがどうして副団長だったのか。
どうしてブレイリーが生死をさまよっていた時に、団員ではなくセプタードが傭兵団を預からなくてはならなかったのか。なぜ他の団員たちでは駄目だったのか。
それには以前から想定していた必然性があったんですが、それを突きつめると、セプタードとブレイリーは、実は最初から貧民だったわけではないのではないか、という結論に達し。
あんたたちとセプタードの父親は、実のところ何者だったの、という疑問に達する。
そしてその答えは、ロジックで決まってしまいました。

というわけでこの一ヶ月、ずっとセプタード視点で全時系列の洗い直しをしてました。
そして実感しました。
ボラプの感想で、一人だけ全く決着のついていない奴がいる、と書きましたが、違う。

セプタード・アイル。お前のケリも、まったくついていねえ! と。

というわけで、書くことが増えました。
ええまた一つ、書かねばならないものができてしまいました。
今回の連載が終わった後、中編一つ追加です。
セプタードの視点で、この物語をもう一回最初から洗い直します。
それはつまり本編でも書かなかった、カティスの子ども時代の話をすることにもなります。
ラストは『彼方へと送る一筋の光』と一緒で、今回の拉致事件が終わるところまでです。
実は最初のプロットでもそうで、それが悩んで止まった原因の一つでもあるんですが、この拉致事件、実はブレイリーとロスマリンの視点だけでは描ききれないところがあったんです。
なのでそこは、次作でセプタードに語ってもらうことになるかと思います。
だからこの先の『彼方へと送る一筋の光』で、不明瞭な箇所が出てきたら、それはいずれセプタードに語らせるつもりなのかもしれない、と思っていただけると幸いです。
困ったなあ、本作でこの世界は区切りがつくはずだったのに。もうちょっとアルバに腰を据えないといけないみたいです。
でもそれが今は楽しくて仕方ないので、できるところまで頑張ってみようと思います。

次回15回。レーゲンスベルグ傭兵団はマリコーンに着きます。
ロスマリン救出作戦が開始しますが、これもまたちょっとだけ意外な方向に進みます。
割と悩んでもいる箇所なので、ジタバタすることになりそうですが、あまりお待たせせずにお出しできるよう頑張ります。
posted by Sae Shibazaki at 21:10| Comment(0) | 小説執筆
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