2020年05月29日

遺される物語

同じタイトルで一年前ここのブログを更新しているのですが、敢えて再び記します。
『彼方へと送る一筋の光』第24回を更新しました。
今回がクライマックス上中下の下。
今回の更新箇所こそが、私が七年ぶりに復帰して以降、一番書きたかったシーンであり、一番不安だったシーンです。
通じないかもしれない。
届かないかもしれない。
判ってはもらえないかもしれない。
けれども判ってほしい、届いてほしいというのが、私の願いです。

もちろん本文に書いたことが全てではあるのですが、これから記すことは野暮かもしれません。
ですが今回の心境についても呟きたいと思いますので、興味がある方はおつきあいくだされば幸いです。







七年ぶりに本作に復帰した心境を、今まで「風が吹けば桶屋が儲かる」と散々記してきましたが、その心境は映画感想であるこちらに記しています。
私、この『ボヘミアン・ラプソディ』を見て思ったのです。

これ、遺された者の物語だと。
これ、フレディという逝ってしまった者の目線で描いておきながら、実のところブライアンとロジャーという、遺された者たちの追憶を描いた物語だと。

それ以降、ずっと考えていました。
『彼方へと送る一筋の光』もまた、遺された者たちの物語です。
カイルワーンという遠いところへ去ってしまった人を思う、遺された者であるロスマリンとブレイリーの物語。
起点は「オフェリアを救済する仕組みは、いかにして成ったのか」だったんですが、それを発案したロスマリンの心の動き、そして人生を紐解いていくと、どうしてもここに辿り着きます。

ロスマリンとブレイリー、カティスは、カイルワーンの喪失に自らの決着をつけなければならない。
オフェリア救済計画とは、結局そういうことだった。

本編を書いていた段階では、決着をつけなければならないという自覚も、つけられるのだという認識もありませんでした。
しかしあれからずいぶん長い月日がたち、私自身が年を取り、身内を何人も見送っていくうちに、考えが変わりました。
本編でブレイリーが語ったように、人の心は変わる。
やっぱり私の心も変わっていたのでした。
その結果、思ったんです。

私はこの話を完結させ、ブレイリーの喪失に決着をつけなければならない、と。

しかし昨年五月、執筆を再開させた当時は、実のところ色々と見切り発車でした。
メルル・ブランの陰謀の下りも決まっていませんでしたし、結末も考えていなかった。以前話したように、ロスマリンを救出して終わりの予定でした。
しかし前回もお話ししたこの瞬間、本当に唐突に「ブレイリー、ロスマリンと一緒にアルベルティーヌに来ればいいんじゃん」と気づいた瞬間、判ったんです。


これならば、ブレイリーはカティスに会える、と。


先刻のツイートは、この瞬間の気持ちです。
私はこの瞬間、ようやくこの物語をどうやって終えたらいいのかが判ったんです。
やっと判ったんです。
その瞬間、心底思いました。

私はこの話を、ようやく書き終えることができる。
今回は頓挫しない。絶対終わらせられる、と。

そうして思いました。
ブレイリーだけじゃない。
カティス、お前も決着をつけよう。
ブレイリーだけではなく、お前の中のカイルワーンへの思いも共に、決着をつけよう。
マリーシアや他に誰に告げられるのではなく。
突発でその事実に遭遇してしまうのではなく。
お前自身の意思でレーゲンスベルグに来て、自分の人生の一番大事な思いにケリをつけろ。
私はそう思ったのです。

そしてそれは、カティスにとって悲しいことでは、可哀想なことではない。
私はそう信じます。
だってそうしなければ、そこを越えなければ、カティスはカイルのことを笑って振り返れない。
カイルのことを、温かな思い出として振り返ることが叶わない。
それをセプタードやウィミィ、何よりブレイリーと共有することが叶わない。
ウィミィが言うとおり、カイルワーンのことを悔恨や慚愧と言った感情とともに思い出すことが、カティスにとって幸福なこととは思えない。

判ってもらえないかもしれない。
伝わらないかもしれない。
けれども伝わってほしい。

喪失を受け入れることが。すべて悲痛とは限らない。
それが叶うだけの時間は、40歳になったカティスにも流れているはずだ。
私はそう信じます。
そしてそれがこれからのカティスの人生に、善きものをもたらすと信じています。


さて次回はエンディング。
時回更新が最終回になるか、それとも二分割になるかは書いてみてとなります。
予定は3センテンス。どれも大事な話です。
できれば早く更新したいですが、いかんせん書くことが多いのでどうなるか。
もう少しだけ本作にお付き合いいただければ幸いです。
posted by Sae Shibazaki at 21:05| Comment(0) | 小説執筆
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。