2023年03月06日

再録本の特典再掲しました

前回の時、こちらで告知をするのをすっかり忘れていました。
ご無沙汰しております、柴崎です。
再録本3セットですが、おかげさまで全て完売いたしました。
先日『それでも朝日は昇る』の特典だった『たとえそれが夢だとしても』を、本日『彼方から届く一筋の光』の特典『繋ぐ糸は黒』を再掲しました。
再録本をお求めいただいた方は既読と思いますが、そうでない方にはお初にお目にかけます。
両方とも、今まで記してこなかったカイルワーン失踪後の短編です。
Twitterの方では以前記したのですが、本公開にあたり、ちょっと追記をしたいと思います。
ネタバレになりますので、読後にお付き合いください。


まずは『たとえそれが夢だとしても』
今回「不条理な夢にまつわるいくつかの掌編」というシリーズ名をつけまして公開しました。
いくつか、というだけあって、他にも予定している作品がありますが、それはいずれ。
不条理な夢と銘打っているだけあって、不条理です。
カイルワーンが本当に未来に戻って、レインとジュリアの結婚式にアイラと参列した、ということはあり得ません。あの話が現実だとしたら、いくら何でも博士とかジュリアの反応がおかしすぎます。
お前らもう少し動じろ、驚け、ということにはなる。
ただ読者の皆さんは、博士がザクセングルスの保護を受けてジュリアたちとともにいること、未来のレーゲンスベルグや粉粧楼の様子は知っているわけです。それがカイルワーンと見たものと全く整合することは「???」というわけですが、それはまあ不条理ということで。
実際のレインとジュリアの結婚式は、ロスマリンとブレイリーの結婚式と併せて、蒼天の次に記すつもりでいます。
それは本作と全く同じように進行はしませんが、ただ何となく本作の裏面として「あれ?」と思うような形にできればと思っています。

続いて『繋ぐ糸は黒』
これはこの数年間、私が漠然と考えていた疑問を形にしたものです。
レインが黒髪黒目というカイルワーンと全く同じ色彩なのは、執筆当時は全くのブラフでした。
もしかしたらカイルワーンの子孫なんじゃないか? というミスリードですね。
ただ、『彼方から届く一筋の光』を書いた後に、思うようになりました。
大陸統一暦1215年から1217年の間、一応平和なアルバに、すべてを知っているレインとジュリア、跳躍前のアイラとカイルがいるんだよな、と。
ああそうか、レインとカイルは会えるんだよな、と。
それと同時に、ふと思ったのです。
レインの母親、リラ・ベルスーズ(書きませんでしたが名前決まってます)とカイルの母親、グレンドーラ・リメンブランスは血縁かもしれない、と。
そこをまとめて、一本の短編に仕立てました。

ただこれを書く前後から思っていたのですが、カイルワーンとアイラシェールはやはりカティスたちの世界にとって「まれびと」であるなと。
突然現れ、大波を起こし、そして来た時より突然に去って行く異邦人であり異分子。
長くとどまり、根を下ろす者ではなかったのだ、と感じます。
そんな彼らは客死したわけですが、彼らにとって「帰るべきところ」はどこだったのか、と考えると、それはやはり元の時代である1200年代だった、と思ってしまいます。
帰れなかった。
でも一緒に帰りたかったし、帰れれば未来があったんですよね。
そしてそれが叶う場所は、ロスマリンとブレイリーの子孫たちが築いていてくれてたんですよね。

今となれば、惜しいなあ悔しいなあ、と思います。
あの結末ありきで私は『それでも朝日は昇る』を書いたけれども、彼らを帰してやりたかった。

もしこれから先、アイラシェールとカイルワーンを葬った記述が本編から消える事態が、どこかで起こったら、私がそっち方向に折れて舵切ったのだと思ってください。
まあそういう機会はないと思いますけど。
posted by Sae Shibazaki at 20:44| Comment(0) | 小説執筆
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